おにてん工房

大本営霧散につき已む無く転進

フィーチャリング プログ・メタル

 ピンボールってやったことありますか?どでんと大きな筐体の中は、さながら遊園地のような仕掛け満載、極彩色。プレイヤーは左右のフリッパーを操作し、ボールを落とさないように弾き返し、仕掛けを作動させてスコアを稼いでいく……そんなゲームです。

 ピンボール台を置いているゲーセンも最近はそうそう見かけることも無くなり、ピンボール好きには寒い時代となっていますが、デジタル上で独自の世界を構築し、最高の演出とバランスで楽しませてくれるデジタルピンボールゲームがあるんです。


「Digital Pinball NECЯONOMICON」SEGA SATURN

   3台もの独創的な台を収録したデジタルピンボールネクロノミコン。開発は技術者集団の「KAZe」。彼らの作り上げる作品には、いつも芸術性を感じてしまう。

 前作にあたる「デジタルピンボール・ラストグラディエーター」の素晴らしいゲーム性と完成度により、デジタルピンボール界では敵なしといった風格を身に付けたKAZeが、満を持して送り込んだタイトルだ。人によっては前作の方が好みという方もいるかもしれないが、個人的にはこちらを強く推薦したい。


  ディスク収納面側に見える小さな数々の写真を眺めてみると、見覚えのあるギタリストを発見することが出来るだろう。独特のピカソパターンを施したIbanezのギターを手にポーズを決めている彼……DREAM THEATERの誇るギタリスト、ジョン・ぺトルーシだ。
 なんと贅沢なことに、本作のオープニング及びエンディングテーマは、ジョンぺトルーシの手掛けたものなのである。製作スタッフの中にファンがいたとのことだが、よくもこのような大胆な起用が成功したものだ。
 ジョン・ぺトルーシ自身も「ゲームミュージックを作るのははじめての経験で、楽しんでやることが出来た」と話しており、無難だが彼の持つセンスを垣間見ることの出来るその2曲は、ファンならば必聴だろう。


 本作はストーリーを擁しており、それはゲームタイトルどおりクトゥルー神話に登場する魔の書「ネクロノミコン」をコンセプトにしたものだ。台の名前はそれぞれ「ARKHAM」「BLOODY TONGUE」「DREAM LAND」。どの台も非常に凝ったラウンドが用意されており、飽きることはない。


 "禁断の遊び"と題されたモード内では、台の選択が可能だ。好みの台をプレイしてもいいし、苦手な台の研究をするのもいい。但しエンディングを拝む為には「REALMS MODE」をプレイし、3台を通してクリアしなければならない。クリア条件は各台の全ラウンドクリアないし台毎に設けられた専用のジャックポットの獲得。条件を満たせば通路がオープンし、次の台へと進めるのだ。全台を攻略出来る自信があるなら是非挑戦し、そのエンディングを拝んで欲しい。


 各台はラウンドそれぞれにテーマ曲が用意されており、それらの曲は笑えるほどにプログレッシヴ・メタルを強く意識したものだ。曲調もバラードから激しいメタルまで様々なものがあり、中にはヴォーカル入りの曲も収録されている。
 ラウンド開始と同時に流れる数々の曲はどれもカッコ良く、このBGMを聴く為だけに購入してみるのも悪くないだろう。

 壮大なコンセプトにプログレッシヴ・メタルを掛け合わせ、それらをバックに贅沢にピンボールが打てる。それだけでこのソフトには大いに価値がある。しかも台の完成度、ボールの挙動等も文句の付けようがなく、これぞデジタルピンボールの頂点と断言出来よう。

 私自身ピンボールにそう詳しいわけではないのだが、購入してから数年……これだけ長い期間楽しめている。プログレッシヴ・メタルが好きな諸兄姉はこれをプレイするべきだろう。きっと併せてピンボールも好きになる筈だ。