おにてん工房

大本営霧散につき已む無く転進

それは剣と魔法の世界

 Welcome to the World of Wizardry

 その昔――ファミリーコンピュータにてドラクエが発売され話題を呼んだ時代。
 アンチメジャーというわけでも無かったのだが、私はひたすらに別のRPGをプレイしていた。

 そのRPGの名はWizardry。  プレイしていたのはファミコン版。キャラクタデザインに末弥純サウンド羽田健太郎という、今考えれば(当時にしても)なんとも豪華なキャストだったのだと驚かされる。未だ色褪せない絶対的なオリジナリティを放つRPGの始祖的存在。実はPC版をプレイしたことはないのだが、秀逸なシステムも含め、ファミコン版は超移植と言っても差し支えないのではなかろうか。


 Wizardry(以下Wiz)をプレイしたことがある方ならご存知だと思うが、このシリーズはストーリー性が希薄だ。少ないメッセージを頼りに想像力で構築される世界観。それを手助けするのが羽田氏による荘厳なサウンド。いわゆるお使いイベントは皆無であり、迷宮を踏破するのは自らの腕にのみかかってくる。ユーザーフレンドリーな部分は非常に少ない(システム関連は洗練されており、その点に於いてはユーザーフレンドリーであった)実に硬派なRPGだった。

 そんなWizを、私はプレイし続けた。1作目である狂王の試練場にはじまり2そして3、ハードをスーパーファミコンに移しての5。しかし6作目以降は少し毛色が変わってしまい、いつしか気持ちも離れていった。

 そして現在。オルタナティブという名の下に、Wizは「BUSIN」というタイトルで甦った。3Dで描かれた迷宮、懐かしさを感じさせるモンスター達はポリゴンモデルとなり、躍動する。イメージ的にもこれはWizだ……と思わせてくれるだけの説得力がある秀作だった。しかしそのシステムは実際にはWizから遠くかけ離れたものであり、Wizのエッセンスを巧く抽出した別物であったのだが。

 BUSIN公式サイト BUSIN0公式サイト




 Wizの名も忘れ去られようかという今。PCにて気になる新作が発売された(PCではさらなる新作も発売中)。しかもテーマは原点回帰だという。PCでゲームをしない私にとっては、気にはなるが買うことは無いソフトだったのだが、なんとその作品が8月にPS2に移植されるとの情報を得た。いよいよ気持ちが揺らぎ始める。

PC版公式サイト
 数点のスクリーンショットを見たが、それは紛れも無くあの頃のWizだった。末弥氏のデザインは原画さながらの美麗さを湛え、迷宮や死亡時の墓の絵等も当時のWizを髣髴とさせるCG。これでサウンドが羽田氏なら完全KOだったのだろうが、贅沢を求めすぎか。


 私と同じような隣り合わせの灰と青春を過ごして来た方がいるなら―PCでゲームをしない方ならなお―この作品はプレイするべきではないだろうか。

 ひとつ楽しみが出来、また一歩生きる為の活力となってくれそうだ。


 余談だが、携帯アプリで配信されているNetherDomainシリーズは、Wizまんまの高い完成度を誇る。Wiz好きなら今更紹介の必要もないであろうが、もし未プレイならオススメしたい。現在3作配信中(内2・3作目はGAME BOYで発売されたWizardry外伝それぞれ1・2の移植であるので、プレイ済みの方はご注意を)であり、そのどれもが長い期間楽しめるだろう。掌でも紡がれる、剣と魔法の世界。

 NetherDomein公式サイト