迫りくる悪意、容赦無き一撃
「まず一言感想を述べよ」
問い掛けられれば、即答出来る。
「類い稀なる傑作」
ゲームキューブ版を、迷った挙句スルーしてしまっていた自分が恥ずかしい。
本体を所持してなかったのも要因のひとつだが、なにより「バイオハザード」という呪縛に囚われていたのは、他でもない私自身だったのかも知れない。
これまで数多のゲームをプレイしてきたが、現時点でのマイランキングベスト3に食い込んだであろう珠玉のスプラッタホラーアクション……
「biohazard 4」(Play Station 2)
▼ ハラキリを越えて
バイオハザード4がPS2でも登場。
それは衝撃の事件であった。
プロデューサーである三上氏がGCユーザーに宣言した約束……それは、GCオンリータイトルとしての開発。
もし他のハードに移植されたりしたら腹を切りますよ、とまで言い切ったのは流石にネタ混じりだったとしか思えないが、まさかハラキリを要求されてしまう事態になるとは思ってもみなかったに違いない。
まさかの「バイオ4、PS2へ移植決定!」の一報。そのハード性能の違いから、誰もが悲惨な移植度になる……と予測しただろう。実際GCで発売されたバイオ4のグラフィックは、そのハード性能を限界まで引き出しており、PS2では到底出すことの出来ない境地に達していた。
つまり大半のユーザーは、この移植に対して「最も普及したハードで人気シリーズ最新作を発売すれば、赤字補填になる」くらいの皮肉な見方しかしていなかったのである。そして、私もまたその中の一人であった。
▼ 破壊なくして創造なし
故・橋本氏の言葉をあえて拝借。
まさに今回のバイオハザードは、この名言のままの経緯を辿っている。
一度は完成を迎えようとしていたプロトタイプの存在する本作。その作品を完全に捨て、新たに構築した勇気に敬意を表したい。作り直した理由は、シリーズのマンネリから脱却が図れていなかったのが最大の要因だっただろう。勿論そのまま商品化しても売れていたに違いない。しかし三上氏率いる通称三上工房は、さらなる高みを目指し、破壊なくして創造なしを実践した。
▼ フルモデルチェンジ
ゲームとしての快感を追求した姿。
戦いの自由度に興奮を抑え切れない。
三上工房はバイオ4プロトタイプだけではなく、バイオハザードの固定観念をもブチ壊した。「ゾンビが出ない」「視点が常にビハインドカメラ(肩越しの視点)」「高いアクション性」。サバイバルホラーアドベンチャーから、スプラッタホラーアクションへと変貌させたのだ。
前作までの名残は、操作性に僅かに残る程度。プレイ開始当時こそ並行移動が出来ない、武器を構えたままの移動が出来ない、ビハインドビューのため視界が狭く画面が見辛い……などのストレスを感じたが、スタートして最初に訪れる村の鐘が鳴り響く頃には、それらのマイナスイメージは完全に消し飛んでいた。全てはゲーム性に合わせた操作形態。この操作だからこそ、このバランスが成り立っていると理解したからだ。
▼ 迫りくる悪意
これまでのゾンビと違い、敵は知能を持ちプレイヤーを追い詰める。
奴らの思考を上回らなければ、生き延びることは出来ない。
爺婆が意味不明の言葉(スペイン語だそうで……)で喚きつつ、集団で襲い掛かってくる。しかもあらゆる手段を用いて。
こちらも出来ることを駆使し、奴らを倒さねばならない。家屋に立て篭もり、玄関の扉を棚で塞ぐ。2階の窓に立て掛けられたハシゴを押し倒す。普通のゲームならこれでひとまず安全だが、バイオ4ではそうはいかない。
玄関は時間こそ多少掛かるものの破って侵入してくるし、倒れたハシゴは立て掛け直して登ってくるのだ。戦闘の舞台となる箱庭に用意されたギミックは実に多彩で、あれこれ試しているうちに際限なくのめり込んでいく自分に気付く。――もっと殺したい!
▼ 特化したゲームっぽさ
リアルな映像や敵との息詰まる駆け引きを実現した本作。
反面、非常にゲームゲームしているのも特徴だ。
敵を倒すとアイテムをドロップする。ゲームとしてはオーソドックスなシステムだが、リアル路線のゲームになるほどこれを嫌う。リアリティの低下を恐れるのだ。しかしバイオ4はその要素を大胆に導入した。弾丸や体力回復アイテムはドロップするし、なんとお金をも落とすのだ。強敵を打ち倒せば多額のゴールドが入手出来るのも笑える。
入手したお金は、アイテムの購入に使用する。道中の節目節目に謎の商人が待ち受けているのだ。高価な品を売ったり武器を改造したり、様々な利用方法がある。これらの要素が混然一体となり、語り尽くせない面白さを形成している。
▼ クレジットに岩明均はいないのか?
ゾンビではない、新たなる敵。
しかしこれはあまりにも……
「お前島田だろ!!」
岩明均氏の漫画がお好きな方なら、そう叫ぶに違いない。
一部の敵は頭部のみが異形となり、伸縮自在の鋭利な刃物形態となってプレイヤーに襲い掛かる。漫画「寄生獣」で見た島田をアニメーションさせるなら、間違いなくこうなるであろうと断言出来る、見事なモーション。思わずビルの屋上からフルパワーで投石したくなる程の類似だ。
しかし特に嫌悪感を抱くわけでもなく、逆に寄生獣をゲームで見れた喜びの方が大きいというおかしな感覚に襲われた。このデザイン、アイデアが被ってしまっただけなのか、はたまたインスパイアなのか……気にはなるが、寄生獣ファンとしては興奮出来る大きな要素のひとつとなっている。
▼ 総括
気になっていた移植度は予想以上。勿論GC版に劣る部分もあるのだが、独自の追加シナリオやディスク交換の煩わしさがないなど、PS2版のメリットも多数存在する。
何より非常に神憑った作品。これをプレイしない手は無い。
もし購入を迷っているのであれば、背後から背中を突き飛ばすほどにオススメのタイトルだ。これをやらずに死ぬな!至高の作品である。
問い掛けられれば、即答出来る。
「類い稀なる傑作」
ゲームキューブ版を、迷った挙句スルーしてしまっていた自分が恥ずかしい。
本体を所持してなかったのも要因のひとつだが、なにより「バイオハザード」という呪縛に囚われていたのは、他でもない私自身だったのかも知れない。
これまで数多のゲームをプレイしてきたが、現時点でのマイランキングベスト3に食い込んだであろう珠玉のスプラッタホラーアクション……
「biohazard 4」(Play Station 2)
▼ ハラキリを越えて
バイオハザード4がPS2でも登場。
それは衝撃の事件であった。
プロデューサーである三上氏がGCユーザーに宣言した約束……それは、GCオンリータイトルとしての開発。
もし他のハードに移植されたりしたら腹を切りますよ、とまで言い切ったのは流石にネタ混じりだったとしか思えないが、まさかハラキリを要求されてしまう事態になるとは思ってもみなかったに違いない。
まさかの「バイオ4、PS2へ移植決定!」の一報。そのハード性能の違いから、誰もが悲惨な移植度になる……と予測しただろう。実際GCで発売されたバイオ4のグラフィックは、そのハード性能を限界まで引き出しており、PS2では到底出すことの出来ない境地に達していた。
つまり大半のユーザーは、この移植に対して「最も普及したハードで人気シリーズ最新作を発売すれば、赤字補填になる」くらいの皮肉な見方しかしていなかったのである。そして、私もまたその中の一人であった。
▼ 破壊なくして創造なし
故・橋本氏の言葉をあえて拝借。
まさに今回のバイオハザードは、この名言のままの経緯を辿っている。
一度は完成を迎えようとしていたプロトタイプの存在する本作。その作品を完全に捨て、新たに構築した勇気に敬意を表したい。作り直した理由は、シリーズのマンネリから脱却が図れていなかったのが最大の要因だっただろう。勿論そのまま商品化しても売れていたに違いない。しかし三上氏率いる通称三上工房は、さらなる高みを目指し、破壊なくして創造なしを実践した。
▼ フルモデルチェンジ
ゲームとしての快感を追求した姿。
戦いの自由度に興奮を抑え切れない。
三上工房はバイオ4プロトタイプだけではなく、バイオハザードの固定観念をもブチ壊した。「ゾンビが出ない」「視点が常にビハインドカメラ(肩越しの視点)」「高いアクション性」。サバイバルホラーアドベンチャーから、スプラッタホラーアクションへと変貌させたのだ。
前作までの名残は、操作性に僅かに残る程度。プレイ開始当時こそ並行移動が出来ない、武器を構えたままの移動が出来ない、ビハインドビューのため視界が狭く画面が見辛い……などのストレスを感じたが、スタートして最初に訪れる村の鐘が鳴り響く頃には、それらのマイナスイメージは完全に消し飛んでいた。全てはゲーム性に合わせた操作形態。この操作だからこそ、このバランスが成り立っていると理解したからだ。
▼ 迫りくる悪意
これまでのゾンビと違い、敵は知能を持ちプレイヤーを追い詰める。
奴らの思考を上回らなければ、生き延びることは出来ない。
爺婆が意味不明の言葉(スペイン語だそうで……)で喚きつつ、集団で襲い掛かってくる。しかもあらゆる手段を用いて。
こちらも出来ることを駆使し、奴らを倒さねばならない。家屋に立て篭もり、玄関の扉を棚で塞ぐ。2階の窓に立て掛けられたハシゴを押し倒す。普通のゲームならこれでひとまず安全だが、バイオ4ではそうはいかない。
玄関は時間こそ多少掛かるものの破って侵入してくるし、倒れたハシゴは立て掛け直して登ってくるのだ。戦闘の舞台となる箱庭に用意されたギミックは実に多彩で、あれこれ試しているうちに際限なくのめり込んでいく自分に気付く。――もっと殺したい!
▼ 特化したゲームっぽさ
リアルな映像や敵との息詰まる駆け引きを実現した本作。
反面、非常にゲームゲームしているのも特徴だ。
敵を倒すとアイテムをドロップする。ゲームとしてはオーソドックスなシステムだが、リアル路線のゲームになるほどこれを嫌う。リアリティの低下を恐れるのだ。しかしバイオ4はその要素を大胆に導入した。弾丸や体力回復アイテムはドロップするし、なんとお金をも落とすのだ。強敵を打ち倒せば多額のゴールドが入手出来るのも笑える。
入手したお金は、アイテムの購入に使用する。道中の節目節目に謎の商人が待ち受けているのだ。高価な品を売ったり武器を改造したり、様々な利用方法がある。これらの要素が混然一体となり、語り尽くせない面白さを形成している。
▼ クレジットに岩明均はいないのか?
ゾンビではない、新たなる敵。
しかしこれはあまりにも……
「お前島田だろ!!」
岩明均氏の漫画がお好きな方なら、そう叫ぶに違いない。
一部の敵は頭部のみが異形となり、伸縮自在の鋭利な刃物形態となってプレイヤーに襲い掛かる。漫画「寄生獣」で見た島田をアニメーションさせるなら、間違いなくこうなるであろうと断言出来る、見事なモーション。思わずビルの屋上からフルパワーで投石したくなる程の類似だ。
しかし特に嫌悪感を抱くわけでもなく、逆に寄生獣をゲームで見れた喜びの方が大きいというおかしな感覚に襲われた。このデザイン、アイデアが被ってしまっただけなのか、はたまたインスパイアなのか……気にはなるが、寄生獣ファンとしては興奮出来る大きな要素のひとつとなっている。
▼ 総括
気になっていた移植度は予想以上。勿論GC版に劣る部分もあるのだが、独自の追加シナリオやディスク交換の煩わしさがないなど、PS2版のメリットも多数存在する。
何より非常に神憑った作品。これをプレイしない手は無い。
もし購入を迷っているのであれば、背後から背中を突き飛ばすほどにオススメのタイトルだ。これをやらずに死ぬな!至高の作品である。