おにてん工房

大本営霧散につき已む無く転進

From Dust インプレッション

9月からの猛烈なソフトラッシュを前に、ふと退屈を感じている君よ。
よもや「Summer of Arcade 2011」から目を逸らしてはおらぬか?

毎週1本、全5本が5週に渡り配信される本キャンペーンのソフトは、例年に漏れずハズレ無しの粒揃い。
今回はそんな「Summer of Arcade 2011」の中でも(私的に)一際注目度の高かった
「From Dust」の感想でも書き流してみよう。

Project Dustとして発表された頃から気になっていた本作の出来栄えや、如何に。

#ほんのりネタバレも含む為、閲覧には注意せよ
▼From Dust

 ▼ゲームの大まかな流れ
  本作は、ステージクリア型のRTSである。
  プレイヤーは神となり、原住民をゴールへと導くのが目的だ。

  神の力は決して万能ではなく、初期の力では吸い込んだ物体を吐き出す動作しか行えない。
  そこで、まずは基本能力を駆使し、原住民をマップに点在するトーテムへと導くところからはじまる。
  彼らは無力な存在で、小さな川や段差があるとすぐに立ち往生してしまうので、
  川に砂を盛って簡易的な橋にしたり、段差に砂をかけてなだらかなスロープを作ってやる必要があるのだ。
  
  トーテムに合計5人の原住民が無事到着すれば、そこには村が築かれ、トーテムに眠っていた力が神に宿る。
  そうして新たに手に入れた力を有効活用し、マップ上のトーテム全てに村を築くことが出来れば、
  次のマップへのポータル……すなわちゴールの扉が開かれるというわけだ。

  至って単純明快なゲーム性なので、未ローカライズに尻込みする必要は無い。
  チュートリアルの簡単な文章を理解しつつ触っていれば、すぐにコツが掴める筈だ。

  さて、とりあえずお試し版をプレイしてみた君が気になるのは、
  「制限時間に追われる忙しいゲームなのでは?」ということではなかろうか。
  もしその点を気に掛けているようならば、安心せよ。
  本作は、村の安全さえ確保すれば、時間を気にすることなくのんびり遊べるのだ。
  じっくりとそのステージの大地を満喫した後に、好きなタイミングで次のステージへと向かえばいいのである。


この動画を見れば、どんなゲームなのかは一目瞭然であろう。
原住民の進む道をどう切り開くかは、君の手に掛かっている



 ▼流体シミュレーションにより描かれる世界
  私のような物理演算フェチにおいて、本作最大の魅力はこの部分であろう。
  冷えて岩盤となる溶岩、水に流される土砂、そして絶えず流動を続ける川・海。
  なんと、これら全てが流体力学シミュレーションによって管理されており、
  君がちょいと手を加えるだけで、世界全てが自然の法則に従いリアクションを見せるのだ!

  例えば水源上流付近を溶岩でせき止め、ダムを作ったとしよう。
  そのダムに水がたっぷりと蓄えられた頃合いを見て、爆弾岩で壁に穴を空けてやれば、
  貯蓄された水は勢いよく噴き出す。
  噴出した水は川となり地形に沿って流れ、その川は扇状地を産み出しつつ地表の砂を押し流していく。
  やがて流れは分岐し海に到達、砂による三角州が形成される。

  いやはやこれだけの自然現象を、恐れ多くも自らの手で簡単に再現出来てしまうのだ。
  さぁ君も試してみるがいい……これが神の力である!


開発中に公開されたテックデモ。
シミュレートされた美しい自然の描写を確認せよ



 ▼気になるボリューム
  キャンペーンは全13ステージ。
  中盤から終盤にかけてのステージは、初見ではクリアに1時間以上掛かる場合もあったので、
  価格を鑑みれば十分なボリュームではなかろうか。

  キャンペーンとは別枠に独立して存在するチャレンジモードは、
  キャンペーンで特定の条件を達成することによりロックが解除されていき、
  最終的には全30ステージがプレイ可能となる。
  このモードは本編とは違い、提示された御題をこなせば即クリアとなるミニゲーム集的なものとなっている。
  タイムアタックの要素も含んでいる為、記録を更新すべく何度も遊びたくなるのも嬉しいところだ。

  ストーリーでもチャレンジでもなく、ひたすら「神の砂遊び」を満喫したいのだ!という君は、
  とりあえずキャンペーンを進めてみるとよい。
  神の力大放出……自由自在にやりたい放題の最終ステージが、君をきっと満足させるであろう(クリア概念あり!)。


  価格に見合ったボリューム、そしてパッケージに劣らぬ品質。
  1200MSPという、XBLAにおいては高額な部類に入る本作であるが、
  上記の駄文に興味が湧いたならば、価格以上の価値をきっと見出せる筈。
  「流体シミュレーションで描かれた大自然を、思うさま眺めることの出来る玩具」と考えれば、なんと安価なことか!


 ▼不満点も書かねば
  お気に入り作品のネガティヴな点を書くのは辛いことではあるが、いくつか気になる点を。

  まず、誰もが感じるであろうカメラ操作の不自由さ。
  遠・近距離の切り替えには不便はないのだが、問題はクォーターと見下ろしの2種類しかない高度設定だ。
  フリーカメラにすることにより、なにかしら不具合があるのかも知れぬが、
  固定2種類の高度しかないことにより、砂をピンポイントで盛りたい場合などに支障が出るのだ。
  慣れてしまえば感覚を掴めるのだが、どうにももどかしさが最後まで付き纏った。

  もうひとつは、リスタート時でもムービースキップが不可だということ。
  貴様ッ!やり直すなど邪道!ということなのかも知れぬが、微妙に長い為少々辛い。
  とはいえ、このムービー中にデータの読み込みを行っている可能性もあるので、
  「now loading...」といった味気ない表示よりはマシだ……とポジティヴに考えるべきか。


 ▼最後に 
  これは要望であるが、思い切って環境シミュレータとして突き抜けることは出来なかったものか、
  との思いがバクハツッ。
  
  シミュレートされた自然環境の中で、生物が息づき災害が起こり、
  それらを影ながら支える神といったゲーム性でプレイしてみたい……。
  川を造ればそこに三角州が生まれ、肥沃な大地に文明が栄え――

  いや、私如きが思いつくことだ。
  きっと開発も、この方向性を開発初期より想定しているに違いない。
  それにこれだけの作品である、恐らくは続編も視野に入れていることであろう。

  もし次回作があるならば、パッケージでも構わぬのでさらに作り込んだものを期待したい。
  本作も衝撃的かつ新鮮味のある素晴らしい作品ではあるが、
  これはあくまで土台に過ぎない気がしてならないのだ。


 ▼おまけ
  お節介ではあるが、君が路頭に迷わぬ様、神の力の簡単な解説をしておこう。

  ・Amplify the breath
   通常時より大量に吸い込み・吐き出しが出来る
  ・Engulf All
   物体を吸い込み続けることが出来るが、吐き出すことは出来ない(Amplify the breathと併用可)
  ・Evaporate
   マップ内の水を完全に蒸発させてしまう
  ・Infinite earth
   砂を無限に吐き出すことが出来る(Amplify the breathと併用可)
  ・Jellify water
   水をゼリー状にし、固形として扱うことが出来る
  ・Put out fire
   火を消し去る(村から悲鳴が聞こえてから使用しても間に合わない程度のスピード)
  *Tips*
   吐き出し中にLT入力で、吸い込んだ分を一気に吐き出せる
   パワーは、使用中に再度選択することにより中断可能(クーリング時間も短くなる)

  もうひとつおまけ。
  「最後まで丁寧にプレイしたのに、Memory of TribeのThe Power of Waterが見つからねぇ!」
  そうであろう、そうであろう。
  かくいう私も、そのひとつが見つからず各マップを捜し回ったのだ。
  というわけで、ヒントだけでも書き記しておこう(ネタバレの為、反転させて確認せよ)。

  ステージ「Emergence」のスタート地点付近の海中に目を凝らすべし



さて、最後の最後にSummer of Arcade 2011に関する余談を。

先週配信となった「Insanely Twisted Shadow Planet」であるが、
お試し版のクレジットを見て思わずひっくり返った。
何故にBGMを我等がDimmu Borgirが担当しているのかッ!
ともあれ、Nuclear Blastレーベル公式の彼らの動画が見つかったので、おもむろに貼り付けておこう。
魂の叫びを何度でも再生せよ!


何故か一時期新日でも使われていた「Progenies Of The Great Apocalypse」。
この曲の収録されているアルバム「Death Cult Armageddon」は名盤!機会があれば君も聴いてみるべし