おにてん工房

大本営霧散につき已む無く転進

断崖式レトロゲー談義 第五回 - 明るく、楽しく、激しく 前編

時が満ちた頃合を見て書き流してやろうと考えていたものの、
気力のある内にやらねばまた放置してしまい兼ねぬ……
そう考えた本ブログスタッフは、取っておきのカードを早々に切ることを決めたのであった。
というわけで、本日は我が心のプロレスゲーを語らせていただくとしよう。

今回取り上げるタイトルは思い入れが強すぎるあまり、
一記事に纏めきれぬという大惨事が発生してしまった為、例外的に二記事に分けて掲載することにした。
贔屓の過ぎる気がせんでもないが、まあよいではないか。



今回のお題は、本ブログ一押しの珠玉の傑作。
HUMANの遺した王道プロレスへの恋文 "全日本プロレス 〜王者の魂〜" である




選べるモードは、全日を丸ごと楽しめる五冠王の軌跡にエキシビジョンマッチ、
チャンピオンカーニバル世界最強タッグにバトルロイヤル、そしてレスラーエディットと充実の品揃え。
さらに、五冠王の軌跡の王道継承編・王道飛躍編のいずれかをクリアすれば、
ベルトの防衛回数が記録されるタイトルマッチモードも開放されるのだ




五冠王の軌跡をクリアすれば、なんとあのジャンボ鶴田が使用可能に。
隠しレスラーながら、コスチュームもデフォルトレスラー同様4着用意されているという完全無欠っぷりだ




本作の魅力は、なんといってもプロレス的攻防を楽しめる独自のシステムであるが、
こだわり抜かれたそのモデリングとテクスチャも見逃すわけにはいかぬ。
見よ、御大と志賀の雄姿を!




顔の再現とモーションに容量を割きすぎたか、ボディのモデリングはかなり荒削り。
腕は肩と肘以外固定され、指はおろか手首すら微動だにしないという始末ながら、
その分テクスチャはかなり写実的に描き込まれており(実写取り込みの可能性あり)、その粗をうまく補っている。
横たわった御大のボディなぞ、今以て最高峰であろう。

さて君、リング上にレフェリーの姿が見えないことにお気づきであろうか。
これは別に画面外に見切れているわけではなく、
本作のレフェリーはカウントを数える際にのみ、小窓で現れる仕組みになっているのである。

レフェリーすら表示できないなんて……と思うかもしれぬが、
レフェリーの表示すら惜しみ、レスラーにリソースを注ぎ込んだのだと私は考える




クラッチシステムと魂ボタンは、本作の画期的な新発明。
欠点もいくつかあるものの、あの日の全日を再現をする上では理に適ったシステムとなっている。

魂ボタンは、ここぞの大技を繰り出す際や、
もう返せない……という状況でのカバーをキックアウトする際に使用する、使用回数の制限された貴重なボタン。
その数はレスラーにより数が異なるが、御大をはじめとする四天王級は4つ、
ガイジンや中堅日本人レスラーは3つ、そして志賀級は2つに設定されている。
秋山は4つで大森は3つというのが、妙に生々しい




ハンセンもベイダーも魂は3つ。
4つないのはおかしいだろう!と思うならば、五冠王の軌跡で育成してやればよいのだ。

さてこちらはタッグマッチの画面であるが、残念ながらカメラはこの引きの状態で固定。
動きに関しては、試合権利のあるレスラーはいいもののCOM操作の待機レスラーは今ひとつうまくいっておらず、
カットに入ったもののそのまま3カウント……なんて場面もチラホラ。
おまけにせっかく用意されているツープラトンも発動し辛いことこの上なく、
ことタッグに関しては成功しているとは言い難い。

そんなイマイチなタッグマッチであるが、
COMとタッグを組んだ際、タッチを行っても操作レスラーの移行が行われない、というのは特筆すべき点だ。
エプロンでじっと見守る御大をこの手で操作できるなんて、それだけでもう……!




大一番ではシャツからガウンに衣装が変わり、入場演出も控え室から再現される。
あの緊張感を入場から味わえるのだ




シングル専用モードである五冠王の軌跡は、全日の興行にフル参戦し、そのタイトルどおり五冠王を目指すモード。
このモードにはデフォルトレスラーだけでなくエディットレスラーでも参戦可能で、
最後までプレイすれば基礎パラメータの増加だけでなく魂ボタンを増やすこともできるのだ(ただし最大でも4つ)。

御大のつぶやきも味わい深い、どっぷりと王道プロレスに浸れるこのモードのBGMは、なんとカクトウギのテーマ。
偽曲が多い中、何故かこの曲は本物が収録されているのだ




このモードでは全日内での凌ぎ合いだけでなく、他団体からの参戦といったイベント等も存在する。
デフォルト以外のレスラーは全てファイプロネームでの参戦となっているが、
入場すればそれが誰なのかは一目瞭然。
なんとなく似てるなぁ……なんてレベルではなく、こちらが心配してしまうほどの仕上がりっぷりだ




毎試合終了後に表示される、御大のありがたい格言。
一言一句心に刻むべし



三沢川田の入場の様子。
会場の雰囲気もしっかり捉えているのが印象的だ




CPU同士による試合を観戦。
少々ぎこちない部分もあるが、その試合展開には目を見張るものがある。
また、試合のみならず、本作の為に録り下ろされた馬場さんの実況にも注目いただきたい




凄まじいまでの再現度で全日マニアを痙攣ダウンさせた王者の魂であるが、
その完成度は完璧にはやや及ばず、いくつかの問題を抱えていた。

それら問題点は、同スタッフによる実質後継作である "キングオブコロシアム" にてほぼ解消され、
晴れて王者の魂は完全版として生まれ変わった筈であったが……と、これはまた別の機会で触れさせていただこう。



今回はこれにておしまい。
次回更新にて、また会おう。